留学に関する記録⑤2つ星フレンチ編

遡ること一月前、留学先の先生のご厚意があって、ミシュランの2つ星レストランである、Le Pré – Xavier Beaudiment  にてフレンチを食した。このレストランは、Clermont Ferrandでは最も人気あるフレンチレストランの1つであり、何週間待ちの予約もざらであるそうである。

https://www.restaurant-lepre.com/#home

 伝統的な、フレンチレストランには、料理を給仕する係と、ワインを給仕する係(ソムリエ)がいる。

古代ローマの文学作品「トリマルキオの饗宴」では、一代で財を成したトリマルキオと呼ばれる男が、人を招いて饗宴をする様子を綴った作品であるが、そこには、料理や、パン、ワイン、そして隠し芸、それぞれを専門に給仕する係が出てくるが、この作品を思い起こさせた。

ソムリエに、自分のワインの好みを尋ねると、オススメのワインを提示してくれる。その後、グラスに少しだけ、ワインを注ぎ、味を拝見し、そして気に入れば、1杯分のワインを注いでもらい、飲むことができる。

甘くない、白ワインでおすすめをくださいと言うと出てきたワイン。名称不明。

 まず、最初に前菜が出てくる。現地の人に言わせると、前菜は、舌を驚かせることが目的であるそうである。

牡蠣の殻でデコレーションされた、この料理がまさにその最初の前菜である。牡蠣の上に葉っぱの載った料理が出てきた。この葉っぱはオイスターリーフと呼ばれ、牡蠣の香りのする葉で有名である。親指の第一関節ほどの大きさの牡蠣であるが、オイスターリーフによる相乗効果で高まって、濃厚な旨味と香りが口の中に漂い、とろけていく様は、まさに「舌を驚かせる前菜」に相応しかった。「このたった一口が17 €もするぜ」と先生は苦笑いした。

その後、クリームチーズとクラッカーの前菜、ポテチの上にイクラとチーズののった前菜などが

やってきた。どれも一口サイズであるが、舌を唸らせるに十分な破壊力を持っていた。

上記の前菜は、塩気や旨味が効いた料理であったが、次のキノコ料理は、マイルドな味わいのものが出てきた。

日本では決して食べることはできないし、たとえようのない香りをしていたが、とても美味であった。おそらく、いくつかのスパイスと野菜を配合したソースをマッシュルームと落とし卵で和えた料理であるが、香りは際立ちすぎず、味は絶妙にマッシュルームと落とし卵とマッチしており、最後にほんの少し苦味が抜けていくこの料理には、さすがは「世界三大料理」の1つ、フランス料理と言わざるを得ない。ここで初めて、フォークとナイフを使うことになったが、先生も、周りの客を見回しても、必ずしも、ちゃんとしたマナーでフォークやナイフを扱っていないように見えた。臨機応変に、食べ物を余すことなく食べることの方が重要そうである。

議題は、フランスの自由や平等、文化に関する話、チーズ、酒など様々な話が出てきた。最初の前菜が出されてから3時間、ついにメインディッシュであるムニエルがやってきた。上のマッシュルーム料理と同じスパイスで味付けされているように感じた。メインは前菜と比べて、マイルドな味わいであった。

そして、最後にデザートまたは、チーズがやってくる。チーズを頼んだ場合、新幹線の車内販売車のような大きさの木製の手押し車に乗せられてたくさんのチーズが運ばれてくる。その中から、3,4種類好きなチーズを選んで、楽しむことになっている。カマンベール、ブルチーズはもちろんのこと、オーベルニュ地方の名産サンネクテルチーズを楽しむことができた。そして、それは強烈な香りと旨味を持っていた。ただ、料理の締めとしてそれを食べることは、日本人の感性には合わないと考える。

デザートでは、視覚で楽しませるようなきらびやかなカラメルアイスクリームや、パンケーキ、マシュマロなどが出てきた。前菜・メインデッシュの塩気をかき消し、満足させる。正直なところ、日本人にとってはかなり甘い味になっている。1口、口に運ぶたびに、砂糖を小さじいっぱい口にほりこんでいるような気分になる。コーヒーとともに食すとちょうど良いのかもしれないが、コーヒーはデザート後に供されるのが伝統のようである。

一体全部でいくらかかったはわからないが、本物のフレンチは、決して日本では味わうことのできない味になっており、その洗練のされ方に圧倒したのであった。

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